6年間の医学部生活を終える頃、私は進路として脳神経外科と整形外科と耳鼻咽喉科で迷っていました。それぞれの臨床内容に惹かれるところがあったのですが、耳鼻咽喉科の高橋宏明教授のお話ぶりが実に明朗闊達で、理路整然とされており、それでいてユニークであったので、こういう聡明なボスの下で働きたいと考え、平成2年の春、耳鼻咽喉科学教室に入局しました。高橋教授は、昭和60年4月1日より平成8年3月31日まで、大阪医科大学の耳鼻咽喉科の教授を務められ、現在は名誉教授となっておられます。
その偉大なる教授が、なんと嬉しいことに4月26日、当院をご訪問下さいました。「河田君(現在の耳鼻咽喉科の教授)のような立派な胡蝶蘭を送ることもしなかったし、用意しようと考えていた色紙もまだ書けとらんので、今のところ、(君には)なんにもなしというわけや、ごめんな。いや、しかし、こんなに立派な医院を建て、無事に独立開業出来て、ほんまに良かったな。おめでとう。」と相変わらずの名調子でお話が始まりました。
当時、沢山のご指導を頂いた恩師ですから、お越し頂けただけでも感謝感激です。教授を退官された時は、私はまだ若僧で、退官記念論文集に載せて頂けるような論文もなく、お世話になりっぱなしだったわけですが、その論文集の巻頭を飾る写真の撮影を私に依頼して下さり、多少の恩返しをすることができたのでした。
このブログの一枚目の日付とサイン入りの写真が、私がライカM6、ズミルックス75mmで撮影したそれです。
あまりに嬉しいご訪問でしたので、高橋教授を高槻市のフレンチの名店・エッソンス・エ・グーにお連れしました。期待通り、山田シェフも渾身のおもてなしとお料理で盛り上げてくれました。
実は、高橋教授と一対一でお食事をしたのは初めてで、大変緊張しました。しかし、とても80歳とは思えないお元気なお話ぶりをたっぷりと堪能することが出来ました。結局、朝10時より午後3時まで歓談させて頂き、一生の良い思い出となりました。