今日は、大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室が主催する研究会に行って来ました。
一般講演は、私と同級生の荒木倫利先生の良性発作性頭位めまいを中心とした理学療法のお話でした。当院では、めまいに対する漢方治療を治療戦略の中心に据えてはいますが、実はこういったEpley法などの理学療法も取り入れています。お話を聴くなかで、先日、総合テレビ「ためしてガッテン」でも話題となった頭位体操などもさらに積極的にご指導していこうと思いました。そして、特別講演は東京大学大学院・・中略・・耳鼻咽喉科学分野の教授・山岨(やまそば)達也先生の「老人性難聴―疫学・発症機序・予防対策―」でした。
中等度以上の老人性難聴の方は全国に220万人もいらっしゃるそうです。悪化要因として、騒音・喫煙・動脈硬化・糖尿病や腎疾患を挙げられておられました。発症機序は、活性酸素産生による酸化ストレスとミトコンドリアDNAの損傷集積による聴神経のダメージの蓄積であり、したがって治療の要点は酸化ストレスの軽減とミトコンドリア機能の改善およびミトコンドリアDNA障害の修復の促進となるそうです。と、いっても特効薬はなく、コエンザイムQ10といったサプリメントを飲むぐらいで、現実的にはヘッドホンによる騒音曝露を避けることや動脈硬化を予防することの方が重要とのことでした。動物実験では摂取カロリーを26%減らすと効果があったそうです。しかし、運動によるカロリー消費と合わせて行うことが大切で、ご自身の登山や金沢大学の吉崎教授のランニングの画像をご披露下さいました。結局、腹八分目にして、よく運動し、騒音と喫煙を避ければ良いということでした。
日本の耳鼻咽喉科界の頂点に立つ頭脳の持ち主である山岨教授、字面だけ見るとおっかなそうですよね。
そこで(?)、このブログの読者のために、山岨教授が堺市の三国丘高校のご出身、すなわち同じ大阪人ということで(?)お願いして一緒に写って頂きました。優しそうな方ですよね。図に乗って、高校生の頃の偏差値をお伺いしたところ、「いや~覚えてないな~」とおっしゃっていました。
ちなみに当院では加齢による難聴は「腎虚」からアプローチすることが多いです。
腎虚とは、加齢などにより『腎』の機能が衰えている状態です。そもそも漢方では『腎は耳に開竅する』とされ、『腎』は内耳機能との関連が深いのです。当然、高齢者に多く、夜間頻尿の訴えが参考となります。また糖尿病や甲状腺機能低下症といった内分泌機能の低下を示す病態、慢性病や生活不節制など様々な原因による消耗によっても腎虚の状態は生じ得ます。腹診所見の小腹不仁が補腎を必要とするかどうかの重要な決め手となります。具体的には牛車腎気丸を処方することが多いのですが、のぼせのある方には六味丸を処方しています。
「体がしゃきっとして、耳が聴こえやすくなった」などと感謝して頂いています。他には内耳のむくみや血行を改善する漢方薬が効く場合もあります。