今年も私にとっての「甲子園」、全国の耳鼻咽喉科医たちと漢方治療について熱い議論を交わせる研究会の日がやって来ました。今年の一般演題は17題、参加者は171名であり、年ごとに盛況度が増しています。西洋医学で対処できない症状・疾患に漢方薬を用いてみようという気運が高まっているようです。報告の対象を列挙すると、急性低音障害型感音難聴、耳鳴、耳閉感、めまい、嗅覚障害、逆流性食道炎、喉頭肉芽腫、嗄声であり、まさに機運が熟していることを感じます。そんな中で、漢方医学的診察も行える私は一目置かれる存在なのです。私が質問をすると、場内がどっと沸きます。私と演者との丁丁発矢のやり取りが毎年楽しみですとおっしゃってくださる先生も少なくありません。
さて私自身は、「アレルギー性鼻炎に対する補陰の治療」として、「加湿を生理機能として持っている鼻に対して、抗ヒスタミン薬を濫用していると医原性の鼻粘膜の乾燥を起こしてしまいます。鼻水を止めることが主目的ではなく、アレルギー性炎症を制御することが大切です。上手に漢方薬を使い分けましょう。」といった内容の口演をしました。(講演要旨)
鹿児島県のせんだい耳鼻咽喉科の内薗先生や北海道・旭川の先生にご質問を頂きました。内薗先生は博学でそのホームページは必見に値すると思います。
懇親会での議論も楽しみのひとつです。この研究会の代表世話人である自治医科大学の市村恵一教授は、私を頭頸部外科医であった頃からよくご存知で、最近の漢方医学への傾倒を高く評価して下さっている有難い存在です。東京医科歯科大学の喜多村健教授は「めまい」の権威であり雲の上のような存在ですが、「めまいに対する漢方治療」をかつて口演した際は座長として温かいお言葉をかけて下さいました。
「耳鳴の克服とその指導」(金原出版)など耳鳴に関する著書の多い元・慶応大学教授の神崎仁先生と熱くお話しさせて頂きました。栃木県の佐々木俊一先生と耳科学に長けていて、いろいろアドバイスをくれる徳島大学の陣内自治先生にも一緒に写って頂きました。鼻疾患の漢方治療にずば抜けて秀でておられる三重県の山際幹和先生とも花粉症や副鼻腔炎の漢方治療についてご指導を頂きました。
大阪府を代表する漢方耳鼻科医である涌井慎哉先生(箕面市)や金沢大学で和漢診療外来を担当されている小川恵子准教授とも楽しく意見交換しました。小川先生は漢方界の三人の鉄人に師事した本格派です。
さらに同じ金沢大学でもバリバリの頭頸部外科医である吉崎智一教授にお声掛けを頂き、小川先生のみならず、正木稔子先生も誘って、二次会へ行くことになりました。正木先生もここ数年、漢方の成果を積極的に発表しておられます。その二次会に、別件で東京に来られていた大阪大学の漢方講座の萩原圭祐准教授や有光潤介先生にも加わって頂き、深夜までひたすら漢方について議論を交わしたのでした。